ごきげんさまです。感護師つぼ(@cango_shi)です。
看護師の可能性を拓くのに、すでに新しい道を切り拓いている方々の活動を知ることが第一歩だと思っています。
2023年5月12日に、スイスの赤十字国際委員会のフローレンス・ナイチンゲール記章選考委員会より「第49回フローレンス・ナイチンゲール記章」受賞者が発表されました。今回、世界22の国と地域から選ばれた37名の中から日本人は3名。以前、紹介させて頂いた草間朋子先生に加えて、髙原美貴(たかはら・みき)さん、今村節子(いまむら・せつこ)さんの3名です。今回は、今村節子さんを取り上げます!
この受賞で、日本人受賞者は115名となり、世界最多になっています。(1920年年からの受賞者総数は1,580名)
写真は日赤のPRより拝借
今村 節子 (いまむら せつこ)
【所属・肩書】公益社団法人教育・ヘルスケア振興節英会 理事
鹿児島中央看護専門学校(3年課程)顧問
【出 身】鹿児島県
【教 育】東京大学医学部衛生看護科
【資 格】看護師
【専 門】看護教育
【実 績】第49回フローレンス・ナイチンゲール記章
ユニークキャリア
今村節子氏は、鹿児島県出身で現在も鹿児島県に在住する98歳の看護師であり、公益社団法人教育・ヘルスケア振興節英会の理事および鹿児島中央看護専門学校(3年課程)の顧問を務めています。彼女の生涯にわたる看護への貢献と献身的な奉仕のため、フローレンス・ナイチンゲール記章を受章しました。
今村氏は、日本の国立大学初の看護学科となる東京大学医学部衛生看護科の創設において、湯槇ます氏(第26回ナイチンゲール記章受章者)と共に教育体制の構築に尽力しました。彼女は「看護の考え方を整理して理論的組み立てをし、看護技術に科学的裏付けをすること」を基本に置き、日本の看護教育に「看護は論理的で科学的」という概念を導入しました。
さらに、今村氏は地域の健康問題に対する深い関心を持ち続け、その教育理念「人生は挑戦の繰り返し、そのプロセスで大事なことは先手を打つこと、なりたい自分を創造し予防をすること」に基づいて、地域医療を担う看護師のキャリア開発を支援しました。その一環として、自ら設立した公益社団法人に私財を提供し、看護を学ぶ学生に対する奨学金事業を創設。また、公衆衛生学的調査研究にも着手し、研究費の助成も開始しました。
その後も彼女の地域への献身的な貢献は続き、地域共生社会の実現を目指して、看護小規模多機能型居宅介護サービスを提供できる地域交流複合施設の開設を推進しました。この施設は、子ども・大人・高齢者が区分を超えて交流できる場でありながら、看護機能を活かして看護小規模多機能型居宅介護事業を展開できるように設計されています。このような施設の存在は、地域の住民が安心して生活できる環境を提供するとともに、地域全体の健康状態の向上に寄与しています。また、今村氏は地元関係機関との連携を深め、地域力向上のための積極的な取り組みを行ってきました。
今村節子氏の長年にわたる看護への献身と貢献は、国内外から高く評価されており、その業績はフローレンス・ナイチンゲール記章の受章という形で讃えられています。彼女の努力と献身は、今日の日本の看護教育と地域医療の発展に大いに寄与しています。今村氏の人生と業績は、看護職に従事するすべての人々にとって、そしてこれから看護の道を志す全ての人々にとって、大いに学ぶべき価値があると言えるでしょう。
感護師として思うこと
看護は、人間の「感性」を磨き、「感動」のドラマがあり、成功に「歓喜」があり、日々に「感謝」があり、人間を「完成」へと誘う、という「鹿児島方式看護の心5K」を提案。地域医療を担う看護師のキャリア開発を支援する節英会を鹿児島市に設立。
今村先生が提案したこの看護の心5K
自分が看護師ではなく、感護師と名乗っている理由がちりばめられていて心から尊敬しています。
フローレンス・ナイチンゲール記章
フローレンス・ナイチンゲール記章は、その名の通り、看護の始祖とされるフローレンス・ナイチンゲール氏を記念して創設されました。1907年および1912年の赤十字国際会議にて、顕著な功績を挙げた看護師を顕彰するために授与することが決定され、1920年、ナイチンゲール氏の生誕100周年を記念して初めて授与されました。
この記章は、鍍銀製のアーモンド型メダルで、表面にはフローレンス・ナイチンゲール氏の像とその生涯を示す「1820~1910年フローレンス・ナイチンゲール氏記念」の文字があり、裏面には受章者の名前と「博愛の功徳を顕揚し、これを永遠に世界に伝える」というラテン語の言葉が刻まれています。
この記章は、平和時もしくは戦時において顕著な働きを見せた保健師、助産師、看護師、または篤志看護補助者を対象としています。その資格は以下のいずれかを満たしていることが求められます。
- 傷病者や障がい者、または紛争や災害による犠牲者に対して、果敢に献身的な看護活動に従事した者。または公衆衛生や看護教育の分野で、模範となるような活動に従事した者。
- 国内災害救護、国際活動等の事業において、果敢かつ献身的に活動し、推薦に値すると判断される者。
- 献血思想の普及啓発、老人看護及び障がい者への理解促進を含む保健衛生活動、看護教育活動、救急法等講習普及事業等においても、献身的に永年その業務に携わり、その実績から高い評価を得られると判断される者。
フローレンス・ナイチンゲール記章は、看護師の中でも特に優れた業績を上げ、人々の生活と健康を向上させるために献身的に活動する人々への最高の賛辞とされています。その受賞者たちは、看護師としての専門性と人間性、そして社会への奉仕を通じて、人々の健康と生活の質を向上させるために特筆すべき業績を上げてきました。
その受賞者たちは、その名が示す通り、フローレンス・ナイチンゲールの精神を継承し、その理念を現代社会において体現しています。彼女たちは、困難な状況下でも個々の患者に対して最高のケアを提供し、感染症の予防と管理、病気の早期発見と予防、健康教育、そして看護職の尊厳と価値を高めるために、自身のスキルと知識を用いています。
フローレンス・ナイチンゲール記章の受章者たちは、看護の価値を世界に広め、看護師が果たす役割を認識させることによって、全世界の健康の向上に貢献しています。その業績は、看護師としての専門性、献身性、そして人間性の最高の象徴とも言えます。
フローレンス・ナイチンゲール記章の受章は、一人ひとりの看護師が可能性として持つ力を示し、看護師が社会全体の健康と福祉にどのように寄与できるかを示す強力なメッセージを送っています。これは看護師自身、またそれを目指す人々にとって、看護の専門性と責任を認識し、それを追求するための大きな刺激となります。